私の赤ちゃん
予定していた全ての植物を配り終えた今日
帰り道に桜の坂道をのぼった
8キロに到達しようとする息子を抱いて歩くのは流石に息がきれる
抱っこ紐からしきりに腕を延ばして枝を指差していた息子は
やがて振動で眠っていった
坂道をのぼりきった場所は春に桜の花をバックに
写真を撮った場所だった
あの日息子は眉に皺を寄せ乳母車から私をみていた
「あとちょっとだからね、今この時は一瞬だから」
そういって写真を撮ったあの一瞬は本当に一瞬だった
あの赤ちゃんはもういない
彼はいるのにもういない
どういう訳か赤ちゃんは慣れたころにはいなくなる
あのときのあなたに私は「待って」も「ありがとう」もいえなかった
それに気付くと鼻の奥がつんとするのは何故だろう
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