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2015年11月27日 (金)

めげないあの子とちいさなひとと


大きめだったから果物ナイフをつかって一切れ切り出して
そのしょっぱいと言われながらもラムの香りが漂うレーズンを噛み締め
「おっとそうだった、これ以上は授乳に障るからいけないな」
と思い味わってから母に譲りました。

ウチの夫がつくった手作りのレーズンバター、
でもアタシも彼ももう食べられないのです。

アタシは乳腺が詰まるので
そして夫は糖尿病になったから

ここ数日アタシは平均より五か月も早く再開してしまった生理に
苦しんでました。
再開する事自体は子宮が元気ということで喜ばしいらしいのですが
子供を育てる授乳のホルモンと新しく命を授かろうとするホルモン
の働きは全く間逆なため、体調も気持ちも中途半端。
でもそれも落ち着くかなという頃、夫がちょっと前に受けた血液検査
の結果を聞きにいったのです。

夫曰く「結果が悪かったらくる前に電話で知らせるって」だったし
一週間電話来なかったんで不安はあれど大丈夫だと思ってたんです
ただ不安だったのは彼が7月以降ここまででもう9キロも痩せた事と
夜中に2パックはジュースを飲んでしまう事でした。
ネットで調べた糖尿病の初期症状そのものでしたから。

最初に夫は電話してきて
「病気でした、糖尿病です」と言って寂しそうに笑いました。

育児と自分と、そして糖尿病。シュミレーションして覚悟してたのに
心の天秤がバキッと折れそうに感じました。
それから、つとめて夫を励ます準備をしました。
なったものは仕方ない、これからを考えようと。

夫はその夜、糖尿病のレシピ本を買い、あてもない初めての
散歩に出かけました。

アタシにはじわじわと実感がわいてきました
「もう二人で膝を並べてラーメンを食べる事もできない」
「息子がもうちょっと大きくなったら一緒に美味しいハンバーガーを
食べる夢も叶わない」
「大好きなおまんじゅうを食べる事もできない」
「一緒にワインの試飲をしてワイワイすることも出来ないんだ」
クリスマスも、息子の一歳の誕生日にケーキを食べる事も出来ない
息子が育ち盛りの時に一緒に療法食を食べさせて大丈夫なのか・・?

そういう現実や不安ががあらわれてささやかな夢が壊れる度に
アタシは息が出来なくなりました
その晩、夫が息子の小さい手を取ってくっついて寝ているのをみて
泣きました。

でもって、こんな目にあったのは、夫が料理に目覚めて嬉しくて
あちこちの飲食店に連れ回したからだ
夫が脳出血で煙草が吸えなくなった時に食べる事が唯一の楽しみ
というのを静止して他のものに目を向けさせなかったからだ
そして予備軍で発見されるチャンスの時期は悪阻で潰してしまった
イベントだなんだと彼の人生を巻き込んだ私のせいだ
私と結婚さえしなければ、彼はこんなにも病を発症する事はなかった

本当は他にも原因はあったのかもしれないけれど
何かが一番の原因だと特定しなければやっていけない気がして
でも自分を責めてもただ袋小路感が増すだけで
でもやっぱり誰かを掴んでこの頭一杯に沸き出す言葉を
処理する事もできなくて
抱えろよ!今までだって抱えてきただろ?出来なくないだろ?
と自分に言い聞かせました。

ただ夫は黙々と、キッチンで出汁をとったりネットで情報を
集めはじめているものの、私は身内に糖尿の人がいないばかりか
ネットで検索するとネガティブなことしか探し当てないしで
考えた結果、夫に許可を取ってFBで身近に糖尿病の人が
いたことのある人や栄養に関して知識がある人に協力を求めました。

するとじわじわとコメント欄が埋まり、生きた情報が手に入りはじめました。
私から言い出せなくてもそっとメッセージがきて、そのやり取りが
すこしずつ糖尿とのつき合い方を教えてくれ、すこし希望がみえてきました。

ちょっと気を抜けば、将来を悲観して自分を責めつづける言葉の
竜巻に飲まれ、背後にあいた穴に落ちそうな怖さはあるけれど
そういうときは根拠は無いけど息子の小さな手を握り
「アタシたちはもっとしあわせになる」
ということにしています

泣いてるのに目の前で大量のウンチをされると片付けてしまうもので
ああ、赤ん坊ってすげえなとつくづく思ったこの数日でした。

めげてるんだろうけど、あきらめない夫と
その間にいるちいさなひと
アタシに出来る事は夫が幸せとよぶこのちいさな息子を
元気に育てる、それだけなのかもしれません。

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