夫の朗読から透けて見えてきた、アタシが取りこぼした気持ち
夫
服部剛主催「ぽえとりー劇場・すらむ」第一回めが終わりました。
写真は優勝者の下川敬明さん。
ここまで観てきた詩人で一番良かった人が優勝者になります。
次点は村田活彦さん。
下川さんはテキストを準備して臨むなど観覧者に対する配慮よし
詩自体にスピード感あってよし
着眼点(ゴキブリ食い競争で優勝後に死んだ男)ユニークでよし
読み方尚よし
と、全てにおいてバランスよく、皆が極めて真っ当で順当な評価をした感じ。
次点の村田さんはパフォーマンスよし、
熱量よし、時間に隙がない感じよし、と
実力が認められた感じの高評価でした。
服部さんが詩の世界の交流を広げようと
文学的な詩人会や、ポップな朗読会や、自身も主催したりと活動した15年
で集まった人たちの色が明確に出た感じでした。
ちなみにアタシはこれ↓
歌詞を読んだことで、いつもはパンツだキックだということばかり
表に出していますがそろそろきちんと言葉を届ける努力をしたほうがいいかなと
実感した5分でした。
でも、アタシにはこの日もう一つ希望が。
夫を詩人ばかりの前で朗読させたかったのです。
夫の朗読は「僕は今年の始めに脳出血をしまして」という
想定外の告白から始まりました。
読んだ詩はひまわりさんと語り合う「世界で一番幸せな事」
夫の声はやさしくゆっくりと会場をつつみました。
そして静かな感動をよびました。
それは音楽をバックにした時とは異質なもので、彼が彼だけの力で成せる
世界に対しての誠実さとそこで生きている自分をいつわりなく表現したものでした。
少し喩えは変ですが、いつも公園のベンチでしずかに時間を過ごしている
おじいさんが、隣に座った落ち込んだ若者にふとかける声のような
声高にしないけど世界を見つめ続けている優しさに満ちたものでした。
服部さんも「難しい言葉は使っていないのに感動する」と褒めてくれました。
すごい才能です。
帰り道、夫になんであの出だしだったかと聞いたところ
数日前に書いたブログの日記の気分を端的に表現したと言っていました。
ツイッターのタイムラインにひっそりとあがった夫の記事を
アタシは見逃していました。
「君はいつも自分で手一杯だからね」と彼はこっちをみずに言いました。
夫の記事には、ここまで言葉に明かしてこなかったささやかな苦悩が
吐露されていました。
誰かの声をきくためにぐっと胸に抑えた感情が。
ごめんね、と思いました。
病気とその再発の可能性は医者が大丈夫といっても
ゼロでない限り続くもので彼は密かにそれを怯えているが
アタシはそれを解決出来るものではないのだな
と池袋の夜空に思いました。
たとえそれが、奇跡的な軽症といわれるものであっても。
ちなみに「世界で一番幸せな事 」は夫が結婚を機に仕事を派遣の現場設営から
料理人になったとき、あんまりにも出来なくて自己否定され
自分を見失いそうになったときに作ったものらしいです。
アタシはその時、料理の道が見つかって良かったね!とか
今日も夫の料理が美味いなあとか
桑沢の授業近いよ、マズいよ!!とか
そんな事で一杯でやっぱり気付いていませんでした。
世界で一番近い他人でごめんよ。
その詩の会の後は、Keiで働いていたコーメイ君の
池袋西武の仕事を慰問しにいきました
そのあと、世界一のピザが食べたいと夫が言ったのに
アタシがまずは会場一周だと言い張ったため店が閉まり
夫は食べられませんでした。これもまた可哀想でした。
ちなみにコーメイ君はGranduca ブースにて渾身のシチリア料理説明を
頑張っています。お時間あったらミトラのブログで知りました、
コーメイ君ですか?頑張ってくださいとか声かけてあげてください。
あと、色々美味しいので一品ぐらい買ってみてちょ。
レモンのスムージが激ウマで疲れとれますよ。
最後に夫の詩をここにものせよう。
「世界で一番幸せな事」
向日葵さん 何故 下ばかり向いているの
もう
太陽は
見ないの?
向日葵は答える
「そうね だって これから 世界で一番幸せな事を するんだもの…」
世界で一番幸せな事って… 何?
「夏の太陽の光を沢山浴びてきて 種を実らせて
それを これから 産み落とすのよ…それって世界で一番幸せな事よ」
僕は少し不満げに質問する
だけど 太陽の光ばかり浴びていたら 家に帰りたくなるし
僕は種だって 作れない それじゃあ
世界で一番の幸せなんて 感じられないよ
向日葵は答える
「私は ヒマワリ 貴方は 人 それぞれにそれぞれの役目や
意味があるわ だけど誰だって 知れたり 感じられるわ
それは沢山の時間の中 知ってきた筈よ そして知ってゆくはずよ 」
僕は頷いた
うん わかった そうなんだ そういう事何だね
じゃあ向日葵さん 何だか言葉が可笑しいけれど
貴方が世界で一番幸せに なれます様に
「ありがとう 貴方も世界で一番幸せに なれます様に…祈っています」
太陽に 照らされた 向日葵は 嬉しそうに 茶色い涙を溢す
さようなら
世界で一番 幸せな 花よ
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