千夏の帰還。
ともかく、「帰ってきた」という一言に尽きる。
昨日はのっけの19時からもう満員に近い人の入り。
夢今34夜はいい感じで始まった。
アタシのリハ中に入ってきた彼女と八ヶ月ぶりに顔を合わせた。
なんかリハ終えて彼女に寄ってみると化粧が濃くなっていて
ちょっと面食らったアタシは「お、おう・・・」とか
空手部の主将みたいな挨拶をし、彼女は懐から折り畳んだ杖を出し
「これ、自分でカスタマイズしたんですよ」
とユニオンジャックのマークをつけたところを強調した。
何故かそのあと彼女はおかみさんにも解説した。
でもこの妙なぎこちなさと間合いはアタシたち独特やもしれん。
アタシは彼女の闘病中、一度も見舞いに行ってない。
折にふれ気になるのでメールはした、
でもなるべくどうでもいい事を書いてた気がする。
彼女からは怪我に関する詳細なレポートがきた。
医者のような正確さだった。
今夫がかかっている先生より余程しっかりしてた。
感情的なセンチメンタルに負け
弱っている所にいくのも、そういう姿をみるのもアタシは違う気がしていた。
少なくとも彼女に関しては。
リハを普通にこなし、おお、これはいけそうだ、新曲だと思い
本番をむかえる
自分は泣くんじゃないか?と数日前から思っていた。
唄っている姿を間近でみたら、泣くんじゃないかと。
しかし泣かなかった、
むしろ泣いたのは彼女の夫だった。
暫しの沈黙があって、すすり泣く声が隣から聞こえた。
それはしばらく聞こえてきてステージから降りた彼女は
彼の顔をちょっと覗き込んでぽんぽんと触った。
ステージを降りた彼女は安堵の表情をしていたかもしれない。
アタシはというと唄い出しの最初の一曲目で唐突に
化粧が濃くなった彼女がアルフィーの高見沢さんに似てるのに気付いた
のでそれをMCの冒頭にいった。
涙を流すよりも、それ以上にそういう涙も乾いてしまうような
活力に満ちていたライブだった。
「死にかかったよ、だから何だ?」と彼女がパンク育ちなら言ったろう、
でもあの子はどちらかといえばUKだ、だから
「この命は一回死んで、また貰ったものと思っている」
と言葉少なに、日常のように言った。
彼女の次は理非不知さんだった。
その事故に一緒にあった彼女の出順は悩むとこだった
冒頭で不知さんは「この出順は鬼の所行だ」といった。
鬼やも知れんな、確かに
でも、この後彼女は唄えるかな?とひっかかりながら唄うより
見届けて唄いきるほうが二人にはあっている気がした。
千夏さんには緊張を解いた状態で
不知さんのライブを観てほしかったし
だもんで思案の末、自分が感想を言う前に千夏さんにマイクを渡した。
「このイベントに紹介して良かったと思っている」
と彼女ははじめて見る彼女のライブを観た喜びを端的に表現した。
夢今のレギュラーもやっぱ彼女に何かしたくて
いろいろやってて
演奏を途中で止めて乾杯したもの(ハッシー)
彼女のためにと気合いを入れすぎて五弦をきるもの(津田さん)
決めポーズで彼女に指を指そうとして失敗し間合いをずらすもの
(これはアタシだ)
などが続々出た。
そして彼女は夢今コインなんと30枚(最高記録)を集め
夫と自分の出演代をまかなって帰った。
きっと最後の集合写真はいい笑顔だったろう、観るのが楽しみだ。
はじめて千夏さんにあったのは、共通の知り合い経由で
彼女がアタシのライブを観にきたのがきっかけだった。
しかもそのライブでは話しかけられなかった。
やけに正面からみてくる客がいるなと思ったがそれが彼女と
メールで知った。
なにか投げかけると即答ではなく数日の思案の末に返事が来る。
忘れていたブーメランが後頭部にあたるようなラグがあって
たしかそんな感じで突然
「私とヴィヴィアンには似たものを感じる」
といわれてびっくりしたりした。
苦手な人がいると楽屋に引きこもって出てこなかったり
ブログの言葉も攻撃的だった彼女が
時をこえて、自分を気遣う皆に向き合い、やさしく言葉をかけている。
音楽と彼女の周りの人たちが彼女に影響した歳月を思った。
ウィルコジョンソンのライブをみた後の夢今で
「癌で死にかかっているのにあんなにスゴいライブをして
どうしたらああなれるんだろう!」
とMCしていた彼女が、その直後に事故にあった時は
「どんだけ音楽に魂捧げんだ、この人」
と思ったが、無事、大きくなって何かを掴んで帰ってきた。
不安もあるだろう、しかし、アーティストは自分の表現で未来をつくる
人種だ、少なくとも占い稼業の自分はそう感じている。
あの表現と歌声なら、欲しい未来を引き寄せる事だってできようぞ。
だからアタシはもう心配しないぜ。
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