おかえりアクアパッツア
夫の入院中、看病人として心配したのは自分の栄養状態でした。
「コンビニおにぎりで1、2週間貫いて本当に
風邪も引かずに身体がもつのか?」
なんて思いながら引きこもるつもりでいたんですが
二日目の夜にふらふらとKeiの扉を叩いたんですね。
そこでアタシは、その日に自分が教え子を連れて行くという
計画を話していながら店に何も言ってなかったのに気付かされたんです。
ホワイトデーのプレートを作って待っていてくれたらしいのですが
うっかりでした、で、その入院の顛末を話しました。
したらケイさんは驚いてこう言ったんですね。
「松崎さん、こうして近所で巡り会ったのも何かの縁です
おにぎりがどうとかじゃなくて、お金の事も気にしなくていいですから
ウチで栄養つけてください、家庭料理でも何でも作るので」
アタシも1日に一回ちょっとでも誰かと話して
緊張をとく場所が必要だ、と思い甘える事にしました。
ケイさんは本当に殆どお金をとらない日も有り
またアタシが来てはいけないと、貸し切りの後も店をあけていたり
そうやって看病をするアタシをウェイターのコーメイ君と共に支えてくれました。
いくといつもケイさんは厨房で忙しくしながら
「旦那さんの具合どうですか?今日もお札に祈ってたんです」
と毎回気にかけてくれました。
そういう思いもあってか、思いがけず早々に退院。
さっそく退院二日目に夫を連れて店にいくと
厨房からケイさんの腕が伸びてきました。
「イッキさん!」
(ケイさんは梶原一騎みたいでカッコいいからという理由で夫をこう呼ぶ)
握手して、よかったよかったといって経過を聞くケイさん。
そして、にこっと笑ってこういいました
「また、一緒にチャーハン、作りましょう」
夫は入院前、閉店後の店に呼ばれて立ち寄り
そこで常連さんと呑んでたケイさんに厨房に連れて行かれて
チャーハンをつくり、それを彼が動画に撮ったなんて
楽しい事があったんですよね。
彼はそれを大事に覚えていてくれた。
さすがに酒は頼めなかったけど
ノンアルコールのリンゴ炭酸で乾杯し、
アクアパッツアを頼みました。
夫はこういうのが食べたかった!といって
病院食の記憶を振り払うように
アクアパッツアとジュノベーゼパスタを食べきりました。
そして、そんだけの光景なんだけど
アタシはなんだかそれが胸にせまるくらい嬉しかった。
その後、夫は満足げにベッドに入りました。
でもって翌日、あの味を思い出してキッチンに立ちました。
また、厨房で笑い転げるような写真を
撮らせてくれるかな、ケイさん。

4月のパーティーは人、集めきれないかもしれないけど
少ないなら少ないで、このお店とこんな交流をして
気持ちを食べさせてもらったんだよ
と、伝えよう、そう思います。
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