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2014年3月 9日 (日)

漂流する30代女子に捧げる一冊。

漂流する30代女子に捧げる本。
そんな仕事ならやめちゃえば ソフトバンククリエイティブ㈱より
著者:阿部涼 1300円

一昨日1日で読んじゃったよ、共感を禁じ得ない。
ブリジットジョーンズの日記とか一時女子の日常みたいな
もんがベストセラーになっとったのをつい思い出した。
テンポがよくて読みやすい本だった。

別に30代の女子だけってわけじゃなく
仕事が続かなければ結婚もできてない、ちょっと焦ってるんです
って人なら男女問わず分かる部分はあるやもしれん。

この本はこのオネエが大学卒業後、就職浪人して
親のコネ入社した会社で頑張ってたのに事故で腰を痛め
そっから色々頑張るんだけど何故か長続きせず
34歳のある日思いあまって98万円の貯金全部使って
やってみたかった仕事をやってみるってお話。

なんか自分が25歳くらいの頃に、トチ狂って手彩色絵はがきを
ネットオークションで売って生計たてようとしたり
派遣社員になってみたりしたことを思い出すわ

彼女は日芸卒なんだよね、アタシの周りはたくさんですよ、
芸術系の学校でて職が続かず、恋愛もウマく行かぬという人が
お客もプライベートも問わず。

銀座のホステス、山修行、そして住み込みの牧場バイト・・・
結論からいうとやっぱり全部途中でやめちゃうんだが
でも何となく「書く事がやりたい事かも?」と思い
出版社に持ち込みをして本になった、という一冊。

ま、ネタバレしてもいいんだわ、彼女がその過程過程で
経験してる感情の変化と、重くならない爽やかな文体と
エピソードに意味があるので。

この本がリアルなのはこのオネエが結局まだ迷ってる
ってとこであり、いい感じのロマンスが始まりそうなのに
逃亡してしまったりするあたり。おおーい、なぜ逃げるんだ!
アンナに相手を欲しがっていたじゃないかと
読みながら突っ込んでしまった。

アタシが仕事柄分析するに、たぶんもうこの人は
不幸なんじゃなくてこの人の宿命の職業がライターなのであって
だから他の仕事をどうしても続けられないんじゃないかって思うのよ
そうだ、そのまま、書き給え!そこに道があるんだよ!!
とか言いたくもなる訳さ。

で、本の中でも彼女は高級クラブのママとかホステスさんに
甘えた動機だとか言われちゃったりする、でも面白いのは
そうやって怒った人が何故か自分の本音を彼女に伝えてしまうとこ。

臆病で、仕方ないけど、憎めない、そんなキャラクターの
彼女の文章を追いながらアタシはハタと気付いたわけ。

彼女は1970-80年生まれで漂流してる人たちのリアルを
実に豊かに浮かび上がらせてくれているということに。

一言で言うと彼女は、ピュアで優しすぎるのよ。
この本ではチャプターごとに彼女の収支がのってるのだが
職が決まらず貯金残高が50万切ってるのに友人の引っ越し祝いや
結婚式のお金を出すってたぶんあり得んし、

この98万円の放浪のあと実家に帰って真っ先に
鬱病になった親友にシャンパンもって会いにいって励ましてるし、
怒られるって分かっていながら父親にライターになりたいって
正面からいってしまうし
ホステス時代に他の店にうつる疑惑が店に広がって
ぎくしゃくしてる中、迷ってるとか正直に伝えてしまう。

そういうまっすぐさって、生きるのに必死だと
仕方ないって捨ててしまうもんじゃん?
何かを計りにかけてピュアを切り捨てる。
それが楽しいわけなくてどっか痛い、でも彼女は
それをもったまんまその重さでこける。

なんか、その彼女の捨てられない感じがリアル。

彼女は文章を書きたいと思ってきた自分を知らなかった訳じゃない
でも、親の安定して幸せな仕事に就いてほしいという気持ちに
逆らえなかった、そして今でもどっか喜んでほしいと思っている
だから自分の得意分野生きていく事に罪悪感があるんだと思う。

アタシ、今の30代ってさ、ジェーン・スーさんの本のときも
思ったんだけど、ウーマンリブとか男女平等とか
そういう時代の空気と並走してきた世代だと思うんだよね

だから自分のやりたいことをやり、
男にも負けないと思ったりもした、
下手すっと、何でもやりたい事に挑戦しなさいって
背中押された人もいたかもしれない。

でもパートナーの探し方も変わるからね、
なんて親の世代は言わんわけよ
結婚して子どもつくっていつかは家庭をもてと
自分たちの価値観を語るわけで
よっぽどの理由で親に反抗心でもなければそれを
反古にして泣かす選択も出来ず
こうして時代が変わったのに、結婚観だけは
親の意向に添おうとするから歪むんだよね。

さらに価値観の変容の中で家とか夫婦を保つ事が
絶対では無くなってるから離婚した家庭もあるだろうし
逆に離婚出来なくて泣いていた親なんかみちゃうと
結婚に強制力がない分、及び腰になるし
それを覆してくれる幸せ結婚相手探しマニュアルもないもん。

ファッションで考えてみてちょうだいよ、
60年代と70年代と80年代のファッションアイテムを混ぜこぜにして
2010年代の若者にも通じる普遍的なスタイルをつくるって
やっぱ大変過ぎるっしょ?

今の不器用なアラサーとアラフォー世代はたぶん精神的に
これをやっちゃってるってことを気付けてないのだと思う。

でも欲張りとは違うと思う、欲張りは欲しいものがわかってる
悪く言うなら優柔不断、良く言うならやっぱ優し過ぎちゃうのだ。

そのうえ受験戦争世代だったしね、
頑張れば人生に成果がでるなんて思ってしまったとこもあるだろう
自分にあった相性の人や場所を見つける力と
偏差値を上積みする力は別だって教えてくれる塾の先生もいなかったさ
ハハ・・・

でもね、お客さんと一緒にこの時代を生きてみて思うんだけど
晩婚になるのはそういう色々があってしょーがないとおもってる。
でも、そういう焦りの中で自分にとって理想のパートナーを
みつけた人たちはナンダカンダうまくやってるし頑張ってるし
シアワセって何か存在で伝える素敵な人生を歩んでると思う。

だからこの本を読んで一人じゃないなど元気をつけて
毎日を自問自答しながら続けてみてはいかがでしょうか。
おすすめです◎

 

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