« ゴーイングアンダー | トップページ | vote。 »

2012年12月15日 (土)

さようなら、また一人。

さようなら、また一人。
30歳過ぎて葬儀に参列すると、
というか規模が小さかったからかもしれないが、
きびきびと動き回る「おくりびと」達が気になった。
この人たちはこうして一日何人の亡骸と
向き合ってきているんだろうかと。

そうやって手厚くされたフミコおばちゃんの身体に
死支度を整え、ふと彼女の手に触れたら成人式の日の記憶が
蘇った。

「あやちゃん、ああ・・・キレイだねえ」

その目に涙を浮かべて彼女はその手を差し出した。
柔らかい厚みがあったその手は柔らかいまま冷たかった。

同年代の子たちは子供を産んで自分の子供時代を思い出すそうだが
こうして別れが昔の記憶をポップアップさせることもある。

「最後の別れですが、何かありますか?」

おくりびとがおばちゃんを棺におさめる前に聞いてきたので
祖父に促すと、それまで何ごとか呟いていた祖父は
じっと覗き込むように彼女の顔を見つめて一言

「冷たいね・・・」

と言って涙ぐんだ。

位牌を持つ祖父のあとに続き、
遺影を抱えたアタシが車に乗り込んだ。
外は寒く、凍える雨が降っている。

おばちゃんは片麻痺だったので、
車いすの操作が大変だったそうで
そんなある日面会にいった祖父は彼女に
こんな冗談を言ったのだそうだ。

「ふみちゃん、わし、もうこんな車いすじゃなくて
宇宙服買ってあげようと思ってんだ。
そしたらね、もうふわふわとトランポリンみたく
好きなだけ浮いて遊べばいいだろ」

おばちゃんは
「ああいいねえ」
といって笑ったらしい。

そこまで話した祖父はそのあと小さくうなだれ
「・・・でもわしは本気だった。」
と呟いた。

アタシの知らないところで、90歳過ぎた兄と
80歳過ぎた妹はこんな会話をしていた。

一件仕事を終えてから帰宅し、ネットで明日の選挙について
調べたりしたあとで、何故かおばちゃんが死んでから
猛烈に食べたくなったハヤシライスを線香を隣に立てて食べた。
そして疲れて帰ってくる旦那のために部屋をあたためている。

生きていく今と、
生きているまわりと、
亡くなった人への思いと

そんなものがくるくると線香の煙とまわる
そんな夜を感じている。

|

« ゴーイングアンダー | トップページ | vote。 »