まだそんなに日の離れてない数週間前
アタシは深夜のダイニングで男と向かい合って座っておりました。
言わずもがな、のちのセバスチャンです。
それまでなにやら笑ったとこしか観たことがなく
肝心なところで逃げる奴、と思いこんでいた相手が
アタシの思いの吐露に付き合ってああだこーだとしゃべってくれ
なんだかこうしてお茶を飲んでる時間がどういう訳か
家族のような居心地の良さであったという意外性に
戸惑っていた時には感情が動いていたのやもしれません。
いや、それ以上にいけなかったのは猫であります。
あの人間に懐かない猫が、セバスには姿をみせて様子を伺って
うろうろしたのであります。
懐かない猫が懐くというのは飼い主のハートを大きく揺さぶるもので。
だがしかし、
別べつに寝たにも関わらず翌日よりやけに親密になったメールに
アタシは憤慨しておりました。
一晩同じ屋根の下にいたからって馴れ馴れし過ぎるだろうと思いまして。
礼節なき人間はホントホントに大嫌い。
当然友人も反対で
霊能者仲間にも
「その日のタイミングは魔が差す時間帯ですよ、踏みとどまって先生正解、
付き合ったらきっと運が落ちてましたよ」
何ていわれる始末。
だがしかし、あまりにも悶々とするもので
日が経つにつれ、ああ、なんかやばいなあと思ったアタシ。
そんな折、店で同僚とその話をしていたら何故か鞄の端が携帯にあたり
「444」と数字を打ったのであります。
エンジェルナンバーでいうところの「見守ってるから大丈夫」という奴です。
・・・・ふみこむか。
そう思い、おもむろに携帯で慣れない駆け引きをはじめました。
ところがです、
そっちに行っていいの?という展開に普通ならなるべきところで
「ああ-こういう返事にはこう返すんだねえ、勉強になるわあ。」
と牧歌的な返事ばかりが来るのでラリーがとまりません。
ものすごいレベルの低いとこで駆け引きが成立する逆奇跡。
ついにイラッとしたヴィヴィアンで美彪さんは
「誘ってんだよ気づけいい加減!!」というようなメールを
自ら送る羽目になりました。
ある男には
「アタシの男になんねーか?」と電話し
またある男には
「今夜一晩抱いてくれ!!」と新宿で土下座をし
今回ばかりは乙女でいようと思ったものの
結局アタクシ宿命的に無理でした。
その後、
終電のサラリーマンを蹴散らして自称「夜を駆けて」きたセバス。
まあ、とりあえず成り行き上ハグしてみました。
だがその後がいけません。
「あの時に言ってたxxて台詞は○○な意味だったんだよね?」
「は?」
「じゃ、あの日言ってた▼▼で思ってたんじゃないの?」
「え?」
キラキラした目で過去の胸キュン語録を確かめるセバスから
冷静に身体を離し、ヴィヴィアンはこういいました
「悪いがセバス....それは全部・・妄想だ」
せっかくのテンションは大きくダダ下がり。
三十路女子、言葉の鉈は半端なし。
俯いたセバスをみながら
「この繊細なシチュエーションってなんかに似てるな・・・」
と思ったアタシ
何か.....
何だっけ......
ああ!!
BOY'S BE・・・だわ!!!!
アタシの高校時代にマガジンに乗ってた漫画です。
で、早速アタシは彼に対して
「BOY'S BE セバス」という称号を与えたのは言うまでもありません。
でも、付き合うことにしました。
彼がここに至ったのは深夜に女子の部屋に入った興奮からではなく
実は思っていたよりも前から思ってくれていたと知ったからです。
今年の誕生日に彼はアタシに鶏頭の花束をくれたんですけど
その花言葉は「色あせぬ恋」で
きっとヴィヴィアンは分かってくれるはず...と健気にネットで調べて
選んだものだったんだとか。
でもまあ、それにアタシは全く気づかず
しかも他の女子と恋愛させようとしてたんですが。
そして、ウチに来たチャンスで告白を逃した彼は
アタシがツイッターとかで紹介してた神社三か所に連続で御参りして
「もう一回チャンスをください!!」
と願掛けしていたらしい。
てか自分で紹介した神社のご利益に
自分で引っかかるアタシって何?
だがしかし、アタシはさらにやらかしてました。
今年の初め、セバスくんはヤスラギに客で来てまして
そんときアタシに
「7月に親しくなる女性がいて、その人8月にイベントに来てくれて
紅い色の皿みたいのあげると精神が落ち着くぜ」
と言われたらしいのですね。
そうしたら
「7月に一緒にお参りにいったヴィヴィアンが
8月に自分が出たイベントに唯一遊びに来て
しかも誕生日に花と一緒に紅い絵のついたお香たての皿あげたら
最近精神が安定してるってブログに書きだしたから
余計に気になってしまった」
らしいのです。
自分で言ったお告げに自分からはまっていって
結果をコンプリートした馬鹿はアタシです。
もう駄目なのかすごいのかよくわからん。
でも、一生に一回ぐらい、溺愛されるのって
経験してもいいんじゃねーかと思って今に至ると。
うん。
まあ、確かに、正直前の男をひきずっていたところはあった
それを共感の引き出しとしてお客さんの話の種にした事もあったし。
でも、アタシにとってのそれは何が何でも復縁という気合ではなくなっていて
ただそれは見極めるとか見定めるために置いておいたのに近くなっていた。
アタシは、復活愛でも新しい恋愛でも、選んでいいと思う。
ただ今回の事を通して
どんだけ悪態をついて人生に不信を叫んでも
心のどこかであるがままの自分でいたいと望み
数パーセントでもそれを大事に心にしまっていた人間は
どんだけ時間がかかっても納得できる時間と状況のタイミングで
それがもたらされるということをアタシは学んだ。
そう、これを伝えたかったのさ。
眠いな。
よくのろけたからもう寝るぜ。