7/13回想①お前じゃなきゃ駄目だったよ、FOXY。
ステージの途中で彼女が突然ギターをおいた。
何をするのかとおもったらポーズを決め、メイク担当の子を紹介した。
ハキハキとしたいい声だ。中盤、すでに二曲終わったステージには
明らかに圧倒的な存在感が残っている。そっと帽子を
真剣なまなざしでループステーションをみては音を重ね、ステージには
彼女の音と「シェリー」という歌声で満たされる。
ファルセットと裏声とそんなすべてで客席の空気は魅了されていく。
ぎこちないはずなのに決まっている、心の揺れが人をひきつける。
「ヴィヴィアンとアタシの音楽を始めた動機はどっか似てる気がするんだ」
唄わなきゃいけなくなった人間の圧倒的な業の深さはわかっている。
最後の曲は「アイデンティティ」だった。
「お前じゃなきゃ駄目だと云って」と歌われ、かきならすギターの音に
振動して相変わらず自分の涙腺が緩む。
しかし彼女は美しく、その余韻のままステージを去った。
なぜ切り札を一番手で出さなきゃいけないかったのか
とアタシは自分の勘に答えを求めたがそれは客席から返ってきた。
隣で画家の輝さまがペンを走らせていた。絵心が動いたと彼は言った。
ライブに頻繁に来てくれた友人がキラキラした目で言った。
「今日のイベントは、とてつもなくすごいことになる予感がするよ。」
千夏じゃなきゃ駄目だったのだ、
このステージに希望を与える幕開けをするのは。
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