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2008年7月16日 (水)

7/13回想⑤アタシ、ヴィヴィアン。

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着替え室に入って絶句した。これはすっかりカタヤマサエの部屋ではないか。
お菓子と灰皿とラム。でもとてもいい感じだ。着替えの間、リカさんの
MCが聞こえた。「私が頼んだんだよ」と彼女が言った。部屋を出る時に
彼女が握手を求めてきた。
アタシはあたしたちを繋いだバンドの言葉を借りた。
「Thank you rocker!」「I love you baby!」
握手は固く、彼女のテンションは高かった。
その時彼女が差し入れのラム酒を殆ど呑みきって
べろんべろんであったのを知るのは会の終了時だった。
通常より冒険気味のセットリストを組んだのは、
舞台の荒れを予測していたからだ。実はアタシ、自分の企画でまともに
ステージを出来た試しがない。チューニングがずれてたり、ピックをなくしてたり
とにかくいろいろ。霊能者はこれを「大難を小難に変えるので仕方ない」とか
「何事も完璧すぎると逢魔を呼ぶ、故に成功するイベントではあなたはこける」
と言い続ける。本音言えばアタシは自分のイベントをかっこよく飾りたい。
でもってこんな失敗のイメトレはしたくない。最近実は深く思い悩んでる。
しかし無情にも変えたばかりの5弦は一曲目からはじけ飛んだ。

アタシはただ「やっぱりな」と思いながら、PAブースから飛び出してきた
店長、長沢さんの温情で弦を変えてもらいながら、即興で詩を作り始めた。
お題は女であることと、キレルと愛の三単語だった。
一番のライブ観覧者であるアイコ嬢は「アクシデントに全く屈しなくなった」
と感心したとのこと。
アタシはそん時すでに同時進行でグルーブの組み直しについて思考していた。
アンコール予定の曲を入れて一気に走ろう、
そう決めた時にもう一個邪魔なものを手放したくなって
その視線の先に輝さまをみた。
小夜子で脚を引き上げるためにマーメイドスカートのジッパーを引き上げて
スカートに深いスリットを作るとアタシはブラに手をかけた。
「輝さまあとはよろしくね」

アタシはブラを投げた。

輝さまは「これでいいか?」と淡々と返してブラをかぶった。
アイコ嬢曰く「気がつくと輝さまの頭にミッキーマウス的な盛り上がり」。
人選に間違いはなかった。そして、これまでのライブの中でも最速に
曲を早弾きし、変えたばかりの5弦を再度切った。
この夜、アタシはヴィヴィアン・ラモーンと化した。
企画ライブでアタシのファンを獲得出来るのはいつになるんだろう.....?

少し個人的なことを書こう。この日、
つたない指先で「東京銀河」という詩を読んでドロップを弾いたのは
10年前のおとしまえのためだった。
19歳の時、この東京銀河という詩をミッシェルのドロップをバックに読んで
アタシはやっと自分の表現を「わかってもらう」ためではなく「つながる」ためにする
ことに気付きだしたが、その矢先にトラブルを起こして詩人としての自分を6年殺した。
待てど暮らせど、嘆けど泣けど詩は心を伴って声にならず、アタシは悔しさから
腕に何度も傷をつけ、当時の男に詩人としてのお前は終わったと言われた。
それは彼の愛だったんだけど、
アタシはアタシへの愛のため、19年前のアタシのためにドロップを弾いた。
「ギターがひけたらCDのオケじゃなくて自分で弾きながら読みたいのに」
と思ってた19歳のアタシのためにこれを弾いた。

「ふかのーなんかないんだよ、どくたーみるく。」

アタシはこれをどうしても言ってやりたかった。
ドロップは特別な曲だ。でもあくまでこれはアタシの問題。
ステージの向こうの客にはどうでもいい話。でもアタシは満足だった。
何故ならアタシは、アタシの一番のファンなのだから。
そして幕はおりた。

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