7/13回想④記憶がトぶまで...次元
「あの.....」転換中、客席に呼びかけようとして息を呑んでしまった。
客が立たない。しばし歓談を....といってもその気配がない。
まるで夏フェスみたいだった。ヘッドライナーを待ちわびる
客がセット中もステージから目を離さないように、客の期待が
一点に集中している。「これすごいことになってるかもしんない!
アタシたち凄いもの作ったかもしんないよ、サエさん!」とアタシは
すでに経験したことのない感情に支配されていた。
その中で次元が登場した。
案の定、イベントの最初で客席に沈みきっていたジーサンは
無言のままギターを抱え微動だにしない。アヤさんは客席に
シースルー素材の生地に刷られた背中のどくろを見せていた。
座る彼女につまびく彼の後ろのライトはテキサスの月みたいだった。
乾いた空気によく似合う。昔の月がなんとかいう外国の歌と
続く恋のバカンスと、音数の少なさにアレンジが際立つ。
彼女は今日はのってるかなと思いながらステージをみると何故か
彼女が立った。「サエに言われて」ということだったが、熱唱後のMCで
立つと熱唱スイッチが入って記憶が飛んだと言っていた。
とにかく、一番浮世にサヨナラさせたのは間違いなくアヤさんだった。
そんな彼女はアタシにライブ中何度も視線を合わせてやわらかく微笑んでくれた。
はじめにクラウドであった時、彼女に「なんて呼べばいい?」と聞かれて
「ヴィヴィアンで」と言ったところ「いやだ、呼びずらい!」と間髪入れずに
言われ「ではキックはどうか?」と言ったところ、これが同じ彩という名前を
もつ二人の間の呼び名になった。で、アタシはその時何故か
「今後この人とどういう距離感で付き合うかわかんないけど
この人は表面の振る舞い以上に内面が壊れやすいから、
そこの柔らかい部分を確実に拾おう」と決めたのを思い出した。
彼女の笑顔は美しい、そしてたまに見えるってとこが大事なんだろうと
思い直しているうちにステージは終わった。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント