7/13回想③タスマニアデビルの戦い、野口暁。
ステージを終えたモンゴリアン・タクがアタシのところに来て
アナウンスをしたほうがいいと告げた。客席を見るとすでにステージを
観られない客が入り口付近で戸惑っている。
出来るだけ詰めてくれ、アタシは今日という奇跡を皆に見てほしいのだ
と伝える。そんな熱気の中、アキさんは椅子に座り、衣装のドレープを
見せながら軽く微笑んで最初の曲が流れ終わるのを待っていた。
外国の子守歌だというけど、本当にいつもどこから探してくるのか
わからない選曲にワクワクしている。というか、信頼していた。
アタシはこの年上の友人を何故か存在から信頼しているのだ。
彼女の動きがゆっくりと空間の空気を攪拌していく。
ふと控え室(この日は着替え室)を見るとサエ嬢が頭をだしてステージを
眺めていた。この二人のコラボレーションも長い。
「今日はジュノーリアクターで踊ってくれと頼んだんだ」というリハの
言葉を思い出す。URARA~という声が流れ始めた。ついにヤマがきた。
その時ハルも来た。ステージに息子の乱入。
そして彼女のとった行動は「タスマニアデビル的武闘舞踏」ともいえる
即興だった。そしてアタシはこの時点でステージの終りに言う言葉は
「ブラボー!!!!」しかない、と思った。
そしてアナーキーインザユーケーのスカスカしたバージョンで
踊る彼女にアタシはまた感情がこみあげた。「あきさん!」
アキさん、アタシはいつだって、あなたがステージという荒野に
即興という足跡で臨むとき、アタシは同じように前例無きとか
セオリーの破壊とかそういう道を突き進まざるを得ない自分の業と
闘志が湧き立って勇気がわくんですよ。
で、アタシはまた少し自分を好きになろうとできるのです、
アナタを通して。という言葉を胸に見つめるステージで彼女は
最高にすがすがしくあっけらかんと踊り、彼女の孤独を完結してしまった。
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